私はパブをこう考える!

〜イギリス人100人に聞いたパブに関する意識調査〜

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 国民の3人に1人は行きつけのパブを持っていると言われているが、これは人口全体で見た数値である。未成年、まったく酒を飲まない女性、高齢者などを除くと、「飲酒人口」のほぼ全員がどこかしらのパブに足しげく通っているのだ。

 イギリス人は、パブについて、どう考えているのだろうか。何を求めてきているのか、どんなパブを好むのか、最近のパブ事情をどう考えているのか。

 なるべく大勢の人からの声を集めたい。そう思いたち、イギリス人100人の声を集めた。

■100人の年代:男性20代20人、30代20人、40代20人、50代以上20人

        女性20代・30代10人、40代以上10人

※パブに行くのは男性が多いので、男性8、女性2の割合とし、それぞれ、年代のバランスがとれるようにし、年代別に集計した。若者と中高年者では、パブに対する考えが違うと予想したからだ。

■職業:アットランダム(コンサルタント系・エンジニア・プログラマーなどのビジネスマン、郵便局員などの公務員、主婦、退職者および学生など。変わったところでは微生物研究家、ミュージシャンなど)

■方法: 

   1 街頭依頼(GBBFで=25名・パブ内で=33名)

   2 Eメールで(CAMRAの会報を通じて募集=42名)

※CAMRA会員やGBBF参加者が多い(あわせて7割近く)ので、必然的に「エールビール愛好家」の多い母集団となった。1 ではけっこうみな楽しそうに回答してくれ、ほとんど断られることはなかった。平均所要時間10〜15分といったところ。

■母集団の住所:ロンドンおよび近郊48人、イングランドの地方都市(ノッティンガムを始めミッドランドの都市、サリー州のなどの南方の都市が多い)32人、スコットランドの各都市12人、ウェールズの各都市8人、北アイルランドはなし

 

 以下、質問事項と、なぜその質問をぶつけたか、そして別表の年代別の集計から言えることを思いつくまま述べていきたい。別表と見比べながらお読みいただきたい。

別表1> <別表2> <別表3> <別表4> <別表5> <アンケート原文(英語)

 

<前文>

 私(日本のライター・白井哲也)は現在イギリスとアイルランドのパブについての本を作成中です。あなたのパブに対する総括的な考えを知りたいので、これらの質問に答えていただけますか? 結果のみを公表し、あなたの氏名やいかなるプライバシーも明かしません。

 

<個人データ記入項目>

氏名、性別、年齢、住所、職業

 

<あなたのパブに関する知識>

1) パブの起源や変遷について知っていますか

 (さしずめ日本人に対するこの手の質問と言ったら、「相撲」の起源を知っていますか、というところだろうか。イギリス特有のこの文化の由来を、どのくらいの人が知っているのか)

●予想どおり、若い世代、女性は、あまり知らない。中高年の男性は、ほとんどの人が知っている。「旅人のためのインだったんでしょ?」などのほか、ジンパレスなどの産業革命前後の状況についてもよく知っているようである。

    

2) お気に入りのパブの看板の由来を知っていますか

(パブ・サインに、それぞれ起源があることは知っているだろうが、行きつけのパブの看板のそれを、主人に聞いたりすることがあるのだろうか。

●これもやはり(1)と同じようなバランスで、中高年の男性に軍配。表に入れていないが、行きつけパブの看板の由来を長々と書いてくれた人もいた。

 

3) お気に入りのパブが、何年続いているか、知っていますか

((2)と同じように、行きつけパブに対する愛着は、ただビールのためのものなのか、それとも歴史好きの国民性を繁栄して、みな創業年数まで知ろうとしているのか)

● これも(1)と同じ。一番長い人では、「14世紀から続いている」と答えた人がいる。

一体どこのパブ? 次の渡英では行かなくちゃ。

 

 

<行きつけのパブについて>

4)どのくらいの頻度でパブに行きますか

a毎日 b週に5,6日 c週に2,3日 d週に1日 eその他

(6万軒のパブがあるのは、みなが足しげく通うからか?) 

● これは「ほぼ毎日」から「月に1度」まで、個人差があった。世代を通して、一番多い回答は「週に2,3度」そんなに飲めて、うらやましい限りだ。現在の不況かつ過剰労働の日本だと、せいぜい週に1度という人が多いのではないか。ただし40代以上の女性は、「週に1度」が50%と頻度がやや少なくなるが、それでも「週に2,3度」も30%もいるし、2,30代に至っては、50%もいる。確かに特に都会のパブでは半数近くが女性という店もある。 

 

5)いきつけのパブが何軒ありますか

(よく聞くのが、イギリス人は職場近辺に1軒、自宅近くに1軒の行きつけがある=愛人がいる人はこれにプラスされる?=ということ。果たして実際は?)

●1軒から10軒と、個人差があるが、世代を通して多かったのが「3軒」。みな愛人持ち…かどうかは別にして、男女とも、世代があがるごとに少なくなっていく。好みがはっきりしてくるということか。特徴的なのは、2,30代の女性が、数多くのパブに行っていること。男性に連れられていくことが多いのと、女性の方が一つのところに根付かず、あらゆる場所に順応できるのかもしれない。 

 

6)いつも行くパブはどこですか

a自宅の近く b職場の近く c友人宅の近く dその他

(これはUsusally とし、後述のFavourite と違い、「気に入っているかどうかは別にして、行く回数が多いパブという意味。要するにどこで飲むのが一番使い勝手がよいのか、を知りたかった)

●各世代を通して、40%〜80%の人が「家の近く」と答えている。一方男性の20代〜40代、つまり働き盛りは「職場の近く」が25%〜30%と、多いことにも注目したい。一旦は自宅に帰ってやおらパブに出かける、と言うのが彼ら特有の行き方だが、「仕事帰りに一杯引っかける」のが多い人も確かにいるのだ。もちろん日本よりは格段に少ない。

 

7)お気に入り(Favourite)のパブがありますか?

(これは、全員が「ある」と答えると予想したが、果たして…)

●「ない」人が10%〜20%もいた! 20%いた40代以上の女性は、ただ旦那や家族についていくだけなのだろうか…

 

7)-2 もし「ある」なら

a)お気に入りのパブはどこですか

a自宅の近く b職場の近く c友人宅の近く dその他

(6と違い、「便利だからいつも行く」パブではなく、主体的に通うパブは、やはり自宅近くが多いのだろうか)

●予想に反し、「いつも行くパブ」とほぼ同じような答え。「いつも行くパブ」は職場近くだが、実はお気に入りは、「自宅の近く」というような差異を期待していたが…。「いつも行く」とお気に入りのパブは同じ、つまり、気に入っているからいつも行く、ということなのだろう。「本当は、違うパブのほうが気に入っているけど、便利だから、こっちに通おう」などということはないらしい。

 

b)なぜそこがお気に入りなのですか(複数回答可)

a飲み物 b客層 cスタッフ d雰囲気 e場所 f食べ物 g音楽 h庭 iTV 

jその他

(パブを選ぶポイントを、人々は何に置いているのか、よく聞く事だが、dの「雰囲気」は多いだろうと思われた。その他の決め手を知りたかったので、複数回答可とした)

● 総じて「雰囲気」にチェックをつけたのは、40〜50%と、やはり多かった。世代間の差が出たのは、「飲み物」で、男性20代が25%なのに対し、30代・40代は80%、50代は90%の人がチェックした。「食べ物」は女性が5,60%と多めなのは納得できるにしても、30代が60%ととびぬけている。一番舌が肥えている、あるいは外食のニーズが高い世代ということか。20代男性は、「音楽」というのが多いのもうなづける。後でも触れるが、上の世代になればなるほど、音楽など要らないと考えるようだ。「庭」「TV」を選んだ人は少なかった。

 

8)どんなタイプのパブがいちばん好きですか、その理由はなんですか

例)トラディショナル・パブ、ファミリーパブ、ワインバー、スポーツバー、ライブパブ 

など

(世代によって、かなり開きが出るのでは、と興味深かった。若者は、スポーツバーやライブパブを選ぶことを予想した)

● 男女の若者で、ライブパブを好んだり、スポーツパブ、ワインバーを選ぶ者がいた。その他の世代では、9割以上が、「トラディショナルパブ」を支持していた。理由は、音楽がない、うるさいフルーツマシンがない、歴史的雰囲気、などひっくるめれば「荘厳な静寂」がある、ということらしい。

●女性がひとりも、子どもと行ける「ファミリーパブ」を選ばなかったのは、意外だ。家族  でわいわい行くよりも、やはり静かに夫婦で飲むのがいちばん、ということか。

 

9)あなたがパブを選ぶときに、最も重要視することは?

(7のbと同じく、「雰囲気」とコメントする人が多いと予想した)

● 予想どおり、「親しみやすいバーマンがいること」「自分の知り合いがいること」なども含め、「雰囲気=居心地がいいこと」を挙げる人が多かった。意外だったのは、「禁煙席があること」を挙げた人も多かったこと。さすがCAMRA会員が多いこともあり、「ビールがおいしいこと」も多数いた。

● 特徴的なのは、「そこに行くと、地域の一員である実感ができるような雰囲気」これは確かに大きな要素だ。どんなにビールがおいしくても、コミュニティには入れなければ、居心地などいいはずがない。ローカルパブはいわば出入り自由の「会員制クラブ」なのだ。

 

10)お気に入りのパブに、他に何を置いてほしいですか?

(行きつけのパブに「足りない」と感じているものは何なのか。未来に残っていくパブの設備を占うためにも、ぜひ聞いてみたかった)

●男性20代から音楽やライブという声。年齢が上がるに連れ、「静けさ」を求める声が多い。これはすでにあるかもしれないが、音楽がある部屋とない部屋が完全に分離されているようなパブは、どの世代も通いやすくなるだろうと思う。40代の男性2人がファミリーパブの増加を望んでいた。

 

11)パブに一人で行くことはありますか? その理由はなんですか?

aいつも bときどき cたまに dひとりでは行かない

(地元のパブなら知り合いがいるのだから、一人で出かけることも多いのではないか、と予想した。そして必ずと言っていいほどつるんで居酒屋に行く日本人と違うのではないか)

● 男性は、トータルして「ときどき」と答える人が半数近く。理由は「ただビールを飲みに行くだけだから」「いつも一人で」という人はほとんどいなかった。「一人では行かない」と答えたのは、男性20代の若者が50%。理由はみなで行く方が楽しいから。

● 女性の方はもっと多く、女性2,30代が60%、40代に至っては、なんと全員が、一人では行かないそうだ。「一人で行く理由がない」という理由のほか、なるほどと思ったのが、「一人で行くと、男あさりに来たのかと誤解されてしまう」という理由。

 

12)いつも、誰と一緒にパブに行きますか?(複数回答可)

a友人 b同僚 c家族 d妻(恋人)eその他

 

(これも「いつも」と「お気に入り」両方答えることで、物理的に誰と行くのが行きやすいのか、と本心としては、誰と一緒に行きたいものなのかの2つを聞くことで、それらに差異があるのかどうか知りたかった)

●世代を超えて、「友人」「同僚」の順に多く、「家族」「恋人(妻)」がこれに次いで同数くらい。

 

(a)そのうち、誰と最も一番よく行きますか

●全体的に、友人、家族、恋人の順だが、世代間で微妙に違う。「友人」は若い世代ほど多く、上に行くと「家族」「恋人」が多くなる。とくに40代以上の女性は、50%が「家族と最もよく行く」と答えている。

 

(b)誰と行くのが一番好きですか

●前項とほぼ同じ分布。「行きつけのパブ」同様、「嫌いだけど、仕方なく一緒に行こう」なんて場合はないのだ。一緒に行きたいから一緒に行く。日本のような「付き合い」「飲み会」はない。

 

<ビールについて>

13)−1 好きなビールのタイプはなんですか

aラガー bエール cスタウト dその他

(パブでビールだけ飲むとは限らないが、あえてビールのみの志向に絞りたかったので、それに限定した。若者はラガー、年配はエール志向と聞いていたが、果たして? このアンケートで最も年代別にした意味のある項目だと思う)

● 「若者」である20代・男性は実に70%、20代・30代女性は50%の人がラガー。男性の場合、それ以上の世代は80%以上がエールと答えた。見事に予想どおりの分布だった。ただ、母集団にエール愛好家が多いことをかんがみれば、当然と言えば当然。( )章でも触れた通り、現在のイギリスではラガーがエールの3倍も消費されているというが、この数値がそのままイギリス人のトータルな嗜好ということになろう。

● スタウト愛好者は10%未満と、少ない。

● 男女とも若者に「ビールはあまり飲まない」という答えがあったほか、40代の男性に「若いころサイダーをよく飲んだから、それが好きだね」という声もあった。サイダーがはやったのはもっともっと前だと思うが、彼の育った家は貧しかったのかもしれない。

 

13)−2 好きなビールのブランドは?

Aラガーでは bエールでは cスタウトでは

(地元の地ビールか、大手ビール会社のビール、どちらびいきなのだろうか)

● これは、集計しながら、後悔した。そりゃあ、たくさん出てくるとは思ったけど、一人で10銘柄書いてきたつわものがいることからも分かる通り、全銘柄をここに明記することは控えなくてはならない。何しろ合計延べ112種類なのだから。

●主だった傾向のみ言うと、ラガーはどこのパブにでも置いてある定番のステラアルトワ、カーリング、フォスターズ、エールについては、ラガーの5倍くらい混沌としていたが、地元のビールびいき、という人のほうが多いようだ。全国流通のビールで人気はフュラーズ・ロンドン・プライド、ティモシー・テイラー・ランドロードだった。前者は、ロンドンで最古の地ビール会社によるもので、私が行った限りのパブでは半数以上、これが置いてあった。ホップのよく利いた、ABV4・1%のビール。後者は、1994年のGBBFでも賞を取ったビールで、最近でも根強い人気がある。これもホップのフレーバーがよく利いた(フルーティーな香りさえする)ABV4・3%のビールだ。

 

14)いつも、何杯パイント飲みますか

(世界で7番目に一人あたりのビール消費量が多い〜年間大瓶165本で日本の約1.8倍〜というが、その真相は? ちなみにこのデータはキリン調べ、1999年)

●結論から言うと、平均3パイントというところだろう。男女とも高齢になるとやや少なくなっていく。やはりこれは個人差があり、1パイントから8パイントまでの答えがあった。それにしても毎回8パイントも飲む20代の男性は、お金が持つのだろうか、などと心配してしまう。 

 

15)今まで飲んだ最高量は何パイント?

(飲むペースにもよると思うし、覚えていないという答えも多いと予想したが、人々は、自分の限界を何パイントくらいととらえているのか知りたかった)

●予想どおりで1パイントから16パイントと個人差あり、「覚えていない」という答えも多数。だが、不思議と10パイントという答えが多かったし、平均的にもそのあたりに落ちつく。(女性はもっと少ない)どんなに時間をかけても5パイントが限界という私から見ればうらやましい限りだ。

 

<パブでのふるまいについて>

16)パブの中で、どこにいるのが一番好きですか? その理由も書いて下さい

aカウンター bテーブル c外 dその他

(テーブルよりもカウンターという答えが多いことを予想した)

● 予想に反して、テーブル席が主流ということが分かった。男性全体でも半数以上、女性全体では8割がテーブルを好む。面白いのは男性は年齢が上がるにつれカウンター愛好者が増え、50代以上では半数以上になり、テーブル派と順位が逆転する。以下、それぞれの派の主な理由

■ カウンター・・バーマンと話せる すぐ注文できる 立って飲むのが好き いろんな人 としゃべれるから

■ テーブル・・座っている方がラクだし、くつろげる 本が読める 場所が広い 落ちつく 食べるときはテーブル グループで行くにはテーブルが向いている

■ 外・・煙草の煙がこない 空気がいい 夏場など天気がよければ最高

 思うに、誰と行くかによって違ってくるのだと思う。グループで行った時は、テーブルの方がコミュニティを作りやすいし、一人で行ったときはバーマンや他の客と話すために必然的にカウンターに座るだろう。

 

17)立って飲むことはどのくらいありますか? その理由は何ですか

aいつも bときどき cたまに d立って飲むことはない

(なぜずっと立ったまま飲んでいられるのだろう? 長年抱いていた疑問だ)

● 男性全体で言えば、「いつも」1割、「ときどき」7割、「たまに」1割「立って飲むことはない」1割、で世代間の差異はほとんどない。女性ではこの山が移動し、とくに40代以上だと実に9割の人が「たまに」と答えている。子どもと一緒のときは座ってゆっくりしたい、という理由が多かった。男女とも「ときどき」と答えたときの主な理由は、「座る場所がなかったときに仕方なく」というものだ。

● みな好んで立って飲んでいると思っていたのだが、実はそうでもないらしい。最近では、カウンターに椅子がまったく置いてないパブは少ない。労働者が仕事帰りに一杯ひっかけるだけの時代はとっくに過ぎ、じっくり時間をかけて飲むほど、経済状況がよくなってきたのだろう。

 

18)バースタッフや主人としゃべりますか?

(日本と違い、客とバーマンがくったくなくしゃべるのが私のパブのイメージだった)

●男性では平均8割、女性では6割の人が「しゃべる」と答えた。男性・50代以上は全員が、逆に、女性の20代・30代になると半分にとどまる。歳を取ればいきつけの店が固まり、若い女性だとそれがまだないということなのだろう。

 

18)−2 どんなことをしゃべりますか(複数回答可)

aスポーツ b仕事 c家族 d政治 e個人的な問題 f異性 gセックス hその他

(どんな話題かなんて、意識してないよ、と怒られそうだったが、次の質問と絡め、バーマンと連れとでは話題の傾向がどういうふうに違うのか知りたかったので)

●次の項でまとめて述べる

 

19)連れとはどんなことをしゃべりますか(前項a〜h・複数回答可)

(前項に同じ)

●一つ言えることは、「その他」を選んだ人が半数以上いるということだ。世間話、地元の話題、ジョーク、近況、「なんでもすべて」…最後のこの答えが、いちばん的を得ているような気がする。あとは、両質問を通して、比較的多かったのが最初の4項目「スポーツ」「仕事」「家族」「政治」だろうか。「仕事」に関しては、バーマンとはあまりしゃべないが、連れとしゃべることが多い。「異性」「セックス」もその傾向に近いが、思ったより差異はなかった。すなわち「下ネタ」は仲間とはするが、バーマンたちとはあまりないと予想していたが、実際はそうでもなく、こういう話はくったくなく誰とでもするお国柄らしい。

 

20)ゲームをやりますか?

 もしやる場合、何を一番やりますか?(前項でYesと答えた場合のみ回答)

a ダーツ bドミノ cクリベッジ dプール、バービリヤード、スヌーカー 

gフルーツマシーン fその他

(次項へ)

●次項へ

 

21)ゲームでは、何が一番好きですか?(前項a〜fから選択)

その理由も答えてください

(  章でも述べた通り、パブの設備で大事な位置を占めるゲームだが、みながみなやっているのか、世代によってゲームの志向が違うのかを知りたかった)

● まず、やるかやらないかで言えば、全体的には意外と半分半分というところ。男女とも、歳をとるに連れてやらない派が多くなり、男性50代以上の20人のうち「やる」と答えた人はわずかに2人だった。女性の40代以上の10人のうちでもたった2人で、どのゲームかに関しては無回答だった。なじみがないから答えなかったのだろう。

 「いちばんやるゲーム」と「好きなゲーム」は、やはり傾向が似ているのでまとめて述べる。全体的に若者はビリヤードの類、年配はダーツであった。ダーツは特に40代以上では人気があるようだ。ビリヤードを選んだ主な理由は、手軽にやれる、競いがいがあり、燃える、人との交流がある(socialize)だった。

 「その他」のゲームは多数出てきたが、多かったのは、ジェンガとカードゲーム。

 

<パブの料理について>

21 )パブでは食べ物を食べますか?

aいつも bときどき cたまに d食べない

(「ビールは食べ物の一種だから、つまみは必要ない」「余計な食べ物は、ビールの味を損ねるだけだ」そんな声をかつて聞いたことがあるので、男性は食べず、女性は家族で行ったりするときに食べることが多いのでは、と予想した)

●全体を平均して、7割くらいの人が、「ときどき食べる」と答えている。「いつも食べる」はほとんどおらず、「たまに」が少し、「食べない」という人もほとんどいない。「ときどきsometimes」と「たまにrarely」のニュアンスは人によって違うだろうから、これらを一緒と考えると、大多数の人が「食べるときもあれば、食べないときもある」ということになる。男女でもほとんど差異がない。唯一40代男性の20%が「決して食べない」と答えたのみ。要するに、腹が減ったときは食う、という、マズローの5段階欲求の階層に従ったニーズで食べると言うことなのだろう。「どんなときでもパブの飯は食わん、ビールだけで十分だ」などという頑固親父は、もはや存在しないことがわかった。

 

21)−2食べる場合、お気に入りはなんですか?(複数回答可)

 その理由も答えてください

aローストビーフ bチキン cスペアリブ dステーキ&キドニーパイ 

dシェパ―ズパイ fフィッシュアンドチップス gプラウマンズ hパスタ 

iサンドイッチ jスナック kその他

(英国の家庭料理や外国料理を列挙してみることで、人々のグルメ傾向も知りたかった。高齢者はローストビーフやステーキ&キドニーパイなどの伝統的家庭料理を選ぶだろうと予想した)

●予想に反し、全世代ばらばらの傾向で、降順あるいは昇順の傾向は読み取れない。全体として捕らえると、人気があるのはやはりフィッシュアンドチップス、プラウマンズ(特に高齢者や女性に人気がある。ヘルシーというイメージがあるらしい)サンドイッチ、スナックといったあたりか。ローストビーフなどのいわゆるディナー的なメニューは敬遠されることが分かった。各料理を選んだ理由としては「ビールに合う」という答えが最も多く、次いで「手軽」という理由も。やはり、みなパブではビールがメインと考えているのだ。

 

22)パブの料理についてはどう思いますか?

( 章でも触れた通り、チェーン店、個人経営を問わず料理に力を入れているパブが増加してきたと言うが、人々はどう考えているのだろうか)

●「パブの飯は恐ろしい(ほどまずい)」「最近はかなりうまくなってきた」人によって意見がまったく違うので詳しくは別表を参照されたい。いきつけの店が違うのだから当然と言えば当然だが、全体を通してみると「最近はメニューがより国際化し、味もよくなってきている」ということが言えそうである。「前項の項目にカレーとチリコンカーンを加えなくちゃダメだよ」というおしかりもいただいたほどだ。ただ、「食べ物そのものを味わうのなら、レストランにはかなわない」という意見も多数だった。

 

<最後に>

23) パブの営業時間については、どう思いますか。

(ランドロードの声は「これ以上遅くしなくていいよ」というものが多かったが、果たして客のほうは?)

● 全体的には「もっと遅くしてほしい」と望んでいる人がほとんどだった。詳細は多岐に渡り、「せめて週末だけでも」「地域によって営業時間をフレキシブルにすべきだ」という理知的な意見から「24時間営業にすべきだ」という酔っ払いの戯れ言そのもののむちゃくちゃな意見までだった。後者のやつらはランドロードたちを過労死させたいのか???

●男女とも、高齢者から、目を引く意見が出ていた。男性・50代以上では、「このままでよい」という意見が多く、「制度上で、飲み過ぎないための規制は必要と考える」女性・40代以上からは、「ナニ―などの、外国人労働者を遅くまで働かせることになるので、時間延長には反対」という女性らしい細やかな意見があった。彼らも酔ったときは「もっといたいな」と思うことだろうが、しらふの時にちゃんと理知的な考えを持てるのがすばらしい。穏やかな国民性を感じた。

 

24)これからのパブに対する要望は? 例)オールナイト営業、禁煙席など

(人々はパブの未来に何を求めているのだろう?)

● 前項にひきつづき、営業時間延長を求める声が多かったほか、音楽をかけないで、という声もあった。しかし、全世代に共通して見られたのは、やはり「禁煙席の設置(あるいは増加)」で、男性・40代に至っては、20人中、実に8人の人がそれを記していた。英国の喫煙率は( )%。日本より少し少ない程度だが、嫌煙権はここまで進んでいるのだ。確かに、ちゃんとしたレストランは、どこも完全な分煙である。

●その他、女性20・30代から「車を運転してきた人にはソフトドリンクをフリーで提供するべき。そうすれば泥酔運転は防げる」という、これまた理知的な意見があった。

 

25)パブで起きた、なにか変わったことは? 

 例)誰かが突然心臓発作で倒れたが、たまたまいあわせた医者が彼の一命を取りと

  めたなど

(これは、ランドロードたちにもぶつけてきた質問だが、いろいろなドラマがパブ内で繰り広げられているような気がして、それを覗き見してみたかった)

●いろいろ書いてくれた人もいたが、7割くらいの人が空欄のままだった。酒の席のことなどすぐ忘れちまったよ、ということなのだろう。書いてくれた中で多かった、パブの3大事件といったら、「ケンカ」、「病気」、そして「裸」ということになりそうだ。まあ、酔っ払ったら、どこの国もすることは一緒という感じですな。酔っ払い万歳!

 

26)パブに対してのコメントを何でも書いてください

(パブにこだわりのある人は、ここにすべてをぶつけてくれい! という気持ちで)

● 時間が惜しかったのか、何も書かない人が6割ほどいたが、その他の「こだわりびと」たちは、大いに語ってくれた。40代のとある男性などは6,7行も熱いコメントを記した。

  だいたい、次の3種に分けられる。

1 「イギリスのパブを誇りに思っている。世界一だ」といったブリティッシュパブ礼賛

2 「最近のパブの傾向はけしからん。若者に迎合しすぎたうるさいチェーン店が増え、 伝統的なパブは廃れつつある」というモダンパブ批判とクラシックパブへの回顧

3 その他、「もっと酒税を安く」「ランドロードは経営法に知恵を絞るべき」「救急措置のスーパーバイザーを置くべき」などの具体的な提案

 特に、2については、予想どおりの反応だった。だが事前は年配者からそういう意見が出て、若い世代からは逆にモダンパブ礼賛が寄せられると思っていたが、男女とも若い世代もそう感じている人が多いことは少し意外だった。年配者だけでなく、若者も保守的なのだ。何せ彼らはまだクラシックパブを知っている世代だ。これがあと何10年かしたら、モダンパブしか知らない世代が生まれ、彼らは「クラシックパブなんてダサい」と言い始めるのだろう。生まれたときは戦争のセの字もなく、学生時代から携帯電話を手にしているどこかの島国の若者のように。

 

集計を終えて■

 めっちゃ楽しい作業だった。CAMRAの会報に協力依頼の記事を載せた直後からは、1週間で30人くらいの申しこみがメールで寄せられ、嬉しい悲鳴を上げた。しかも「俺は地域の支部長をやっている」「日本に、俺の友達がいる。ぜひ連絡してやってくれ」「今度に本に行く。滞在するホテルの連絡先はなになにだ。ぜひ会って、飲もう」「まだイギリスにいるなら、ぜひ会ってビールについて語りたい」などなど、いろいろなコメントともにだ。

 一人一人のを集計しながら思った。質問の最初から最後まで、その人の答えをチェックしていくと、その人がどんな志向でどんな人なのか、がだいたい分かってしまう。たとえば30代の男性でエンジニア、週に2回パブに行き、いきつけのパブは仕事場の近く、食べ物はめったに食べず、パブの営業時間にさして不満もない、といったら、彼はバリバリ仕事をしているビジネスマンタイプなんだろうな、とか、40代以上の女性で主婦、週に1回旦那と家の近くのパブに行き、バーマンとガーデニングの話をし、パブには音楽がなくていいと思っており、禁煙席の増加を望んでいる。これは典型的な有閑マダムだろうな。などなど。アンケート用紙を見ていると、その人の顔まで浮かんでくるから、不思議だ。「パブはを映す」そんなフレーズが思い浮かんだ。

 

この項以上

 

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