最も飲みやすく、地元の人もそれを勧める人が多かった。
地方都市の複合施設「ホッグズヘッドホテル」(ノッティンガム州)
地方都市郊外によく見られるタイプの、ビジネスホテルとリゾートホテル、ファミリーパブが混ぜ合わせられたようなタイプ。1階がパブでがホテルで2階がホテルという形式はどこも一緒だ。泊まる人も、ノッティンガムなどに出張で訪れたビジネスマン、週末を郊外で過ごす家族連れなどさまざまだし、パブに来る客は、ローカルのファミリー、遠方からのファミリー、地元の若者、地元のビジネスマン、などこれまたさまざま。
ここは、前章で紹介した「ネルソン・アンド・レイルウェイ」のハリーに紹介してもらった。彼に「どこかインをやっているパブはないか」と聞いたところ、彼の友人が経営しているここを紹介してもらったのだ。
ノッティンガムに滞在中、ここに2泊させてもらい、よなよなオーナーのマルコムと妻のキャサリンといろいろな話をした。
マルコムは、のんびりした50くらいのおっちゃんで、ドリンクの値段をいちいち妻に聞いたり、と「本当にオーナーなのか?」と思えるほどおっとりしている。キャサリンの方はマルコムよりずっと若く、(40歳前後)彼とは対照的で、てきぱきとよく働き、どの客に対しても、「今日は、ランドリーないのですか?」などとていねいに応対する。聞くと、もうひとつの家族と共同経営という。
彼らが経営しだしたのは13年ほど前からで、この建物はパブとして使われるまでは、農家だった。実際に建物は古いが、古く見える家具や柱などは、そのように見せかけているだけとのこと。名前のホッグズヘッド(Hogshead=腕いっぱいに抱えるほどの大樽、原義は「豚の頭」)は、かつてのオーナーの名前だったらしい。それにちなんだ大樽も店内に飾られていた。
マルコム自身は30年ほど前からこの村に住んでいて、やはりこのパブの常連だったという。やはりここを守りたくて、買い取ったのだろう。
1階は大小3つの部屋に分かれていて、広いパブリック・バーが1室、ラウンジ・バーが大小2室。総勢300人は入る、広い店内だ。入り口のすぐ前には、椅子とテーブルが4組置いてあり、その横には芝生の上に子供用の遊び場とテーブルとベンチが置かれている。子供を遊ばせながら、大人はランチを楽しめるというわけだ。
「今までの13年間、なんか変わったことなかった?」と聞くと、
遠方から出張してきた客が、店内で具合が悪くなったときに、そこに居合わせた地元の看護婦さんが介抱してあげて、そのおかげで彼は一命をとりとめたという。逆に、店の前で自動車の排気ガスを引き込んで、自殺をした人もいる。
「彼もここの常連だったから、ここが好きで、死に場所に選んだんだと思うよ」
とマルコム。
セラーを見せてもらうと、パイプを自動的にクリーニングする装置があった。これは、他のどのパブでも見られなかった。
オーナーになって、一番良かったことは? とマルコムに聞くと、「このお嬢ちゃんと結婚できたことかな。チュ」(とキャサリンの頬にキス)
そりゃどうも。
こんなにとぼけたキャラなのに、こんなに大きなパブを経営できるのは、しっかりしたキャサリンあってのことなのだろう。
Hogshead Hotel
Main street
Awsworth
Nottinghamshire
0115-9384095
目次に戻る