The Cock inn(Buckinghamshire,UK)


マネージャー、テリーは、ずっとパブのランドロードだった父の影響を受け、最近開業した。建物自体は700近く年の古いもの。小村の教会のすぐ横に建つ、典型的なヴィレッジパブだ。

 
▲入口も部屋も二つに分かれている、という典型的な昔ながらの作りだ


■父が身一つで始めたパブ経営■
 なんと14世紀からパブでありつづけたその場所は、英国のど真ん中、バッキンガム州のNew Crawleyという小村にあった。

 外観の風格もさる事ながら、その親父が全く持ってここに似つかわしい。
 「男たるもの、何か野心を持って始めなくては、と思ってね」
 マック・マクラーレン(68歳)は、もともとニュー・キャッスルの生まれで、当時、父親が炭坑夫だったが、閉坑しまったので、彼が3歳のときにここバッキンガム州に移住してきた。マックはここで帽子工場に勤めていたが、帽子産業自体が先細りになってきて、パブ経営に乗り出すことを決意した。
 始めは10年間、タイドハウスを経営、そこでパブ経営のノウハウを学んだあと、ウーバンという村でフリーハウスを始めた。
「経験がなかったからね。始めはやっぱりタイドハウスの方がよかったと思ってるよ。リスクが少ないし、経営方法を指導してもらえたからね。」
 パブ経営で一番大事なことは? と問うと、
「アトモスフィアだね、なんてったって。どんなに調度がよくても、飲み物食べ物がおいしくても、居心地がいい場所じゃなかったら、リピーターは望めない」
 確かにマックは、地元客と屈託なく話していて、これならマックを慕っている人も多いだろうな、と思わせた。
 そしてここはイスラエル料理などの各国料理や、サメのステーキを出すなど、料理への工夫も惜しんでいない.人徳と商才、このどちらかが欠けていても、パブ経営はできないのだろう。
 こうして一軒目、二軒目とも地元客をしっかりつかみ、ローカルパブとして定着し、マックの挑戦は、見事に成功した。
 ■息子が父の偉業を継いだ■

60歳を超えて、そろそろ引退の時期が近づいたころ、彼にさらに嬉しいことが起こった。
 息子のテリーが、新たなパブを開業する決意をしたのだ。マックの子どもは二男と一女だったが、長男を亡くしてしまっていた。
 テリーは、ゴルフセンターで働いていた。そこにはレストランやバーなどの設備があったので、飲食業の経験はすでにあったわけだ。
「飲食業のノウハウは持っていたし、なんて言ったって、生まれたときからオヤジはランドロード。パブで生まれ育った俺にとって、パブをやろうっていうのは、ごく自然な選択だったね。会社組織で働くってのだけは真っ平ごめんだったし」(テリー)
 チャールズウェルズ社のタイドハウス、「コック・イン」は、教会の隣という立地条件からして文句なしだった。日曜日のミサ帰りの客が望めるからだ。
 ここはもともとは14世紀からパブだったところで、店の隣の駐車場は、教会の墓だったそうだ。教会を建てるときのビルダーたちの休憩所が発祥らしい。そしてここニュークラウリーは人口1000人前後の小さな村。
「自分がずっと村育ちだからね。そりゃ村の生活は、不便だったり、刺激が少なかったり、と悪いところもあるけど、自分にはやっぱりこのライフスタイルが合っていると思ってね。都会でパブをやっても、顧客のライフスタイルがわからないから、いいランドロードにはなれないと思ったんだ。」(テリー)
 父マックは、今ではテリーのデイオフの日だけにヘルプで入っている。
 
■よいセラーマンの認定を取得■
 さて、テリーの店、ここ「ザ・コック・イン」だが、パブリック・バー、ダイニングルームに加え、ファンクションルーム(多機能室)もある。地元の人のパーティーや集会のときに貸し出すそうだ。地元の人向けの掲示板もあり、たくさんのビラやお知らせが貼られていた。まさに、パブの原型をそのままとどめて現在に至っている、といった風情だ。
 テリーもやはりランドロードの息子、めきめき商才を発揮し、開業して半年後に、よいビールを出すパブの認定証、カスクマークを取得して業界紙で話題となった。
 テリーに、パブ経営で一番大切なことは、とマックに対してと同じ問いを向けると答えはこうだった。
「アトモスフィアだよ。やっぱり」
 マックと同じ答え。マックの経営哲学は、しっかり息子に受け継がれているのだ。このほかに、マックがやったように各国料理を出すなど、父をずいぶん参考にしたという。
「アドバイスもたくさんしてもらったよ。オヤジがいなかったら、この店はここまで流行ってないね、絶対に」
 一日に数件のパブがつぶれているこのご時世、現にこの店の向かいのパブも長く続いていたが、最近つぶれ、現在は個人の邸宅になっているという。そんな中で、力強い父の存在のもと、テリーの店は、コック・インの歴史に輝かしい一ページを残すことになるだろう。 
The Cock Inn
High street,New Crawley,Tel01234-391222
Manager/Terry Mclarlen
看板の通り、いまはCharles Wells社
のタイドハウスだ
外の掲示板には、イベント情報など
町の公的なお知らせが掲示してある。
「地域社会の中心」というかつての
パブの機能を、ここは今でも果たして
いる。ここに限らず、カントリーパブ
ではまだまだこういう所は残っている.
室内には、個人的なクラシファイドや地域のイベント等のお知らせが。グレート・ブリテッシュ・ビアフェスティバルの告知もあった
向かって右側から入る
パブリックバーの入口
パブリック・バー内。
質素な椅子とテーブルだ
となりのラウンジ・バー内。
床には絨毯が、そしてソファや
暖炉がある
週末だったので、食事を楽しむ人々でいっぱいだった。
壁に所狭しと絵が飾られ、シェルフには骨董品が並ぶのはヴィクトリアン調の特徴
優秀なエールビールを出す店
にのみ送られる認定証、
カスクマークCask Marque
テリーは開業してたった半年後
にこれを取得して話題になった
多機能室。地元の人の集まりに使われる
テリーと、その父マック。
「親父がいなかったら、
この店はできなかったよ」
とテリー。
Special Thanks to Ms Yoko WATANABE 
Back Home