パブの看板
見ているだけでも楽しい、個性的なパブの看板。
典型的なものの写真を見ていきましょう。
■パブの看板の由来■
海外に行くと、「なんて看板が少ないんだ」とどこの国に行っても感じることだろう。
イギリスもその例外ではないが(というか、単に日本に看板が多すぎるだけなのだが)、唯一見る看板と言えば、パブの看板だ。しかもどの店も千差万別な名前とデザインである。ロンドンあたり、首を痛くして上をずっと見上げてみると、いかにパブの看板がバラエティーに富んでいるかが分かる。
イギリスは実は、昔は現在の日本に負けず劣らず「看板大国」で、昔はあらゆる職種の店先に掲げられていた。と言っても、これは字が読めない人のためだった。靴屋、本屋、ビン製造業など何の商売をしているのか一目でわかるような工夫がされていた。18世紀に番地制度が取り入れられてからその多くは廃れていったが、パブだけは、しっかりその名残が残っているのである。
パブに今のような看板が作られる前、つまり先ほど述べたように、パブがまだ「イン」だったころ、「ブッシュ」という、長いさおの先に小枝を房状にしてつけたものを店先につきだし、「酒を売ってるよーーー」という目印としていた時代もあった。日本での造酒屋の「杉玉」とよく似ているのがおもしろい。
パブに看板が掲げられるようになったのは、1393年、リチャード二世の命によって、巡礼者が快適に宿を探せるように、と旅宿に看板を掲げることが義務化されたのがきっかけ。これが今日の「パブ・サイン」の原型だ。のちに、大きく作りすぎた看板によって通行の妨げとなったり、時には風で落ちて死人が出るということがあってから、現在のようなサイズに統一されている。Swing signと言われ、風が吹くと前後に揺れるように上部分しか固定されていないことが多い。そのあたりも赤提灯に似ていて、気味が悪いほどおもしろい。
現在は1万5000種くらいの屋号の種類があり、一番多いのは「King'S Arms(王様の紋章)」「Prince of Wales」「Victoria」「George」「Swan」(白鳥はヘンリー5世の服紋章)などの王家にちなんだものだ。ほかには「Nelson」「Shakespear」などの有名人、「Red lion」(この名のパブが一番多く、4,5000軒はあるだろうと言われている。日本の赤提灯同様、目につきやすいからか?)などの動物、「Rose」などの植物にちなんだものなどがある。
おもしろいのは「Crown and Anchor」(冠といかり)や Star and Tipsy tord(星と千鳥足のヒキガエル)などの二つのものが合わさって出来たような名前だ。これには、それぞれの変遷があり、二つのパブが合併してできた場合もあれば、村人同士の聞きまちがいから発生したというような場合もある。
たとえば、別のところで紹介しているNottingham のNelson & Railwayは、1805年のトラファルガー海戦後、ネルソン提督をたたえるため「The
lord Nelson」と命名された。やがて「Railway hotel」と合併したので、両方の一部ずつをとって「Nelson&Railway」となったというわけだ。
■パブ・サイン集■
最も多い名前のひとつ、White lion
Crown など 王室関係のものが多い
White hart (白い鹿)はリチャード2世の副紋章だ。
実際はFree House ではないが、昔の名残をとどめるため、
そう表示している(Buckingham州)
Cock,Swan,Cat,Lumbなど,動物も多い。下のCharles Wellsはこのパブがチャールズ・ウェルズ社という醸造会社のビールしか置いていない、いわゆるタイドハウスTied Houseであることを示す。地方のパブは、土地があるせいか、建物に着いているのではなく、このように目立つところに立っている場合が多い。(Buckingham州)
■ちょっと変わったパブ・サイン■
400年近くの歴史を持つド田舎のこのパブの看板は、古びた木でできていた。一度風で飛ばされたが、昔のスタイルのままのレプリカを作ったそうだ(Derby州)
「イギリス一古いパブ」の看板は、アンティーク趣味の、おしゃれなものだった。もちろん1189年ではなく後世に作られたものだ(Nottingham州)
■ロンドンの有名パブのパブ・サイン■
ロンドン、コベントガーデン駅の前のNag's head
ロンドン・ハムステッドのHolly Bushにいく路地を曲がる前の立て看板
ロンドン・シティのYe Old Cheshire Cheeseの看板は、まさにちょうちんのようなかたちだ
新しいパブだと、やっつけで、シンプルな看板にしてしまうこともある。
(2009年Yorkで見たシンプルな看板の動画)