英国のパブで日本人が働いている光景は、日本の和食レストランで蒼い目のイギリス人が働いているのと同じ位、異様な光景なのではないだろうか?
ブライトンでも大変人気のあるローカルパブで私が働き始めてから2度目の夏が来た。今年にかぎって言えば夏らしい日はまだまだ数える程だが、とにかく毎回楽しく、でも緊張感をもって働いている。
もともと私はこのパブの常連客の一人だった。ここのオーナー夫妻や常連客達と親しくなった頃、当時のアルバイト先に不満を持っていた私に、オーナーがここで働くことを勧めてくれた。接客業には自信はあったが、私は飲食関係で働いた経験がなく、ビールなんてキリンとギネスしか知らなかったし、スピリッツ類の知識なんて皆無にひとしい状態だった。英会話力も十分でなかった当時の私を、オーナー夫妻は根気よく、本当に辛抱強く教育してくれた。このパブで2年間勤務している間に、既に20人以上が解雇されている。その理由は様々だが、こうして未だにここで働けるのは幸運としかいいようがない。
イギリスのパブで働くのは、正直言って大変だ。それ相応の英語力と、正確で迅速な対応が必要になる。特に私のパブは地元客にとても人気があり、 夜は人であふれかえる。週末の夜ともなると、3人のバースタッフ、2人のキッチンシェフ、及びマネージャーで馬車馬のように駆け回わっている。大音響の中で、オーダーを確実に短時間で手際よくこなさなければならず、3分以内に10ドリンクを同時に用意するぐらいのスピードが要求される。以前5種類のドラフトを同時に用意したことがある。その所要時間1分弱、客から喝采を浴び、ちょっと得意になった経験がある。
客のusual drinkを憶えていくのも大事なサービスの一つ。それがレギュラー獲得に繋がることはどの国でも同じだ。また客とのチャットから学ぶものは単に英語会話だけに留まらず、イギリス独特の文化というか生活や考え方などを知る基準になるし、ここで培った友人の輪は、更にその輪を広げ、老若男女幅広く親しい地元の友人ができた。この仕事から学ぶことや得るものは非常に多く、私のイギリス生活の貴重な財産となっている。
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向き不:向きがあるみたいで、僕も経験がありますが、カウンターの中から、ほぼ同時にオーダーを言われても、ホント覚えられない! それを見事にこなしているアキラさんは、パーマンとしてのタレントを持っていたのでしょう。
2年の間に20人解雇されていた理由は、一体なんでしょう? 予想だと、勤務態度が悪かったんだと思うのですが。バーマンや飲食関係の仕事は、ウラを知らずに、表面だけ見て憧れて門を叩きますが、中途半端なヤル気の人は続きません。それほどウラでは体力的にも能力的にもきつい仕事です。よほど人が好きとか扱っている飲食物に興味があるなどでないと厳しいと思います。アキラさんの場合、続いているのは「イギリスについて知りたい!」という知的好奇心からなのでしょうか。