イギリスのパブにまつわる幽霊話はよく聞くが、まさか私の働くパブに幽霊が出るなんて!最初は冗談かと思って友人の話を聞いていたのだが、どうも本当に幽霊がでるらしい。そんな奇怪現象を全く信じていない現在のオーナー夫妻は『そんな馬鹿な!』といって一笑していたが、閉店後の店内で仕事後のビールを飲みながらその話を初めて聞いたとき、なんとなく悪寒を感じたのは私だけではなかった筈だ。
このパブが農場主の家として建てられたのは、約180年前、1820年代後半のことらしい。その後の1828年9月に免許を取得する。しかしパブとしての正式記録として残っているのは、時代をさかのぼること1892年に評判の高いパブリカンとしてMr. E. Hollowayが免許を取得してから。その後1909年迄の間にこの地域の中心として、食料供給などを含め幅広く事業を展開する。
カウンター後部に位置する現在”Snug”(=個室)エリアと呼ばれているその場所は、薄暗く特にカップルが好んで利用しているが、この家で一番涼しい所であった為、元々はセラー(貯酒所)であった。ところが一時期、遺体安置所として併用されていて、検死及び検死官裁判所として市に貸し出されていたという記録がある。
実際に奇怪現象が明るみに出始めたのは1980年にMr. I. Potterが事業を始めてから。多数のビールグラスが、夜間打ち抜かれて棚から落ちたり、粉々に砕かれて床に散乱していたり、普段穏やかな彼のテリア犬が突然不気味な表情に豹変し、ぐるぐる狂ったように円を描くように走り回ったことがあったそうだ。
更にその後の新しいオーナーが、部屋に着替えをするため戻り(同じ建物3階が居所となっている)、鍵をかけて出かけた。数時間後部屋へ戻った彼が発見したものは乱雑に散らかされた部屋だった。家具があちこちに動かされ、壁にかけられていたオーナメントがベッドに投げ出されていたそうだ。
最新の奇怪現象としては1997年、Mr. W. Boothが早朝、”Red-nose-day”の装飾準備中にジュークボックス(当時のMusicプレーヤー)が勝手に音楽を奏で始めた後、突然一時停止し、これまで聞いた事のない非常に奇妙な音楽が流れ出した。2分後には元の音楽にもどったそうだが、その2日後彼がすべての音楽をチェックしたが、奇妙な音楽は発見できなかったそうだ。
元々検死された遺体が安置されていた家、亡くなった方々の中には当然怨み死にされた方もいた筈だ。心中察するにあまりある。本当に早く成仏というべきか、天国にて安眠して頂きたいものだ。そういえばオーナー夫妻が1年前、私にしつこく、この部屋を借りる事を勧めていたのを思い出した。当然この夫妻はこの怪奇現象を知っていた訳で、その上で私にこの部屋を勧めるなんて、ちょっと酷いなあと思う。でも英国の幽霊って、何となくフレンドリーで、日本の幽霊のようにおどろおどろしたところがなさそうなので、恐ろしい気がしない。ちょっと会ってみたい気がする今日この頃である。
Comment(Terry)
幽霊が出るパブの話はこのHP内でも書きましたが、イギリスでは幽霊話はパブの来歴に花を添えるということで歓迎されるそうです。でも、働いているほうとしてはそんなに気分がいいほうではないと思うのですが、オーナーや他の従業員はそのあたりどう考えているのでしょうか。ところで、このパブはかつて食糧供給もしていたりして、街で最古の部類に入る歴史を持つのでは?
Answer(Akira)
街にはもっと古い建物があり、たとえば最古のパブは500年前です。
オーナーや従業員はぜんぜん怖がっていませんね。私だけかも(苦笑)